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トップ対談

近年、企業を見るときには環境を含め社会的側面を無視できないということが共通認識になりつつあり、日本でも2015年に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が国連の支援する責任投資原則(PRI)に署名したことで、急速に意識が高まってきました。そのような社会情勢下、社会とともに発展するヤマダ電機がすべきことはなにか、山田会長による事業環境説明、および社会的側面の再確認として元社外監査役である中村豊氏と山田会長との対談を実施いたしました。

事業環境について(振り返りと戦略)

全9事業の実績を発表。今後も事業別の取り組みを強化していきます

―まず山田会長より、2018年3月期の振り返りをお願いいたします

2018年3月期については、国内景気は政府の経済対策や日銀による金融政策などにより、緩やかな景気回復が続いた一方、海外経済においては、米国の政策動向や欧州の政治情勢の不安定性、アジアの地政学的リスク、金融資本市場の変動の影響などにより、先行き不透明な状況が続いています。家電流通業界においてはテレビや冷蔵庫、洗濯機、携帯電話などの需要は好調に推移したものの、パソコンなどのデジタル関連は伸び悩みました。
 このような市場環境の中、当社グ ループが数年来続けてきた「構造改 革」の成果が結実しつつあり、売上高 の拡大に寄与しました。

―「構造改革」の進捗に関する具体 的な取り組みを教えてください

家電流通業界には、少子高齢化や人口減で来客数や需要が伸びず、今後の回復が見込みにくいとの見解があります。そのような中、当社グループはここ数年で「構造改革」を進め、家電販売事業をコアにして事業領域を拡大してきました。具体的には住宅をインフラとした住関連のソリューション事業であり、住宅、住宅設備機器、リフォーム、家電、不動産、金融、サポートサービス、環境ビジネスなどを展開してきました。
 そのひとつとして、家電にインテリア家具の販売をプラスした「家電住まいる館」の店舗を展開し、需要の拡大を積極的に推進しました。

―中期経営計画の進捗はいかがでしょうか

中期経営計画については、目標達成のためのベースである構造改革が進展していることが評価できます。会長の私が「新規ビジネスの創出」、一宮副会長が「構造改革と中期経営計画の推進」、桑野社長が「既存ビジネスと人材育成」を担当し、それぞれ課題を挙げて取り組んできました。途中は苦しい時もありましたが、2018年3月期の後半からスピード感を持って成果が感じられるようになりました。
 2019年3月期は、5ヶ年の中期経営計画の4年目になりますが、1年前倒しで利益面での目標達成を目指しています。また2018年3月期の中間決算から、全9事業別の実績を発表できるようになりました。これまでは事業別の数字が発表できなかったことから、当社グループの事業や戦略が不透明との意見も聞かれましたが、発表したことで評価されるとともに各事業の目標が明確になり、今後も事業別の取り組みを強化していきます。

―2019年3月期の見通しを教えてください

まず2019年3月期については、経営スローガンとして「新たなステージへの挑戦」を掲げるとともに、取り組むべき6つの項目を発表しました。構造改革については手綱を緩めることなく、さまざまな施策を実施していきます。新コンセプト店舗である「家電住まいる館」については、研修などが進んだこともあり、年度内に100店舗の出店を進め、ビジネスモデルをさらに強固なものにしていきます。また3年後の販売を目指し、EV(電気自動車)の開発のためにベンチャー企業に出資を行っています。これらの取り組みが有機的に結びつき、かつ体系的に効果が出るように行っていくことが必要であり、コラボレーションを図ることでシナジー効果を高めていきます。
 構造改革による事業領域の拡大だけではなく、そのマネージメント力も要求されるため、コーポレート・ガバナンス体制を強固にすることも必要と考えています。

コーポレート・ガバナンス体制について

最大で最強のガバナンスとは、全社員が創業の頃の理念を共有することができる体制です

―中村様は、2017年までヤマダ電機の社外監査役を務められていましたが、まずヤマダ電機のガバナンス体制の特徴を教えてください

まずヤマダ電機のガバナンス体制で最初に驚いたのが、取締役会を軸にして有機的にPDCAを高速で回転させている点です。一般的な企業では月に1回、年に12回程度の取締役会が行われますが、ヤマダ電機では毎週で年に52回あり、さらに取締役会だけではなく、さまざまな局面で多様な会議が行われ、PDCAサイクルを回しています。さらにこの高速のPDCAに加えて、組織横断的な横串が通っているため、情報が網羅的に社内に浸透しやすく、いつどこで何が起こっているかの情報共有が速いという特徴があります。
 また現場を熟知している役員が多いため、さまざまな改革に関しても、役員から現場発信での意見が上がってくる、つまり現場の意見を吸い上げて協議するという特徴も挙げられます。
 この2つがヤマダ電機のガバナンスの強みであると考えます。私は社外の立場でしたが、役員会以外でも各種の検討会などに参加でき、情報が得やすくプロセスがよくわかったことを思い出します。

当社のガバナンス体制の特徴をご指摘いただきましたが、「人」が重要であるとの考えを貫いてきました。経営理念である「創造と挑戦」は創業当初に作ったものですが、社員に成長してもらうために掲げたもので、当時は独立して店を構えることを進めることもありました。その後時代が変わって家電量販店に業態が変化し、基本方針となるものを実践的な言葉で制作しました。
 ヤマダ電機の企業理念は面白いと言われます。一般社員は基本方針を理解し行動すれば、企業理念である「創造と挑戦」につながります。また管理者はマネージメントとして実践することで理解することができるようになっており、経営資源の最適化を図る形になっています。時代が変わっても、そのような経営理念と基本方針で変わらずにやってきましたが、人を中心に風通しの良い効率的なガバナンス体制につながっていると考えます。

個人的な見解ですが、最大で最強のガバナンスとは、全社員が創業の頃の理念を共有することができる体制ではないかと考えます。組織が大きくなるとそれが難しくなり、あちこちで綻びが出てくるようになり、システム的な体系によりそれらを守ろうとする傾向があります。
 私も何度かヤマダ電機の研修所である「礎生塾」を訪問しましたが、あそこは会長の創業時の理念を自動的に理解することができる場所ではないかと感じており、人材育成に大きな役割を果たしていると思います。

企業の問題のひとつとして文化の継承の難しさがあり、そのために箱根に研修所を作りました。社員には「この会社で働けて良かった」と誇りを持てる会社であることを目指し、研修を続けてきました。私一代で終わる会社であるならば関係ないが、企業が継続していかなければならないと考えます。

―逆にヤマダ電機のガバナンスの問題点については、どのようにお考えですか

役員は現場を熟知しているので、現場に立脚した対応や改善は進んでおり、その点は全く心配ないと考えます。今後は会長のお話にもあったように、事業領域を拡大していく中で、これまでやってこなかった事業への対応も必要であり、今はアジア地域での展開だが、さらにグローバルに拡大すると、そういうところのリスクをどのように対応するのかを今から考えておく必要があると思います。

その点については、人材育成を中心とした対応を考えています。目に見える形でさまざまな事業に挑戦していると、ありがたいことに自然と人材が集まってきます。人材を集めながら既存社員の育成を進めることで、多岐にわたるリスクに対応するしかないと考えています。
 またそのようなリスクに対応することが、事業の発展のみならず、ステークホルダーの皆様に対して満足していただけることにつながり、社員には「本当に勤めて良かったと思える会社」と思ってもらえることになると考えます。

社会貢献活動について

アピールは下手だが、本当にできることを愚直に継続的に行い、社会に貢献しています

―今度はヤマダ電機の社会貢献活動についてお話しください

CSR活動については、今はESGとして意識されることもありますが、これまでのヤマダ電機のCSRの歴史を振り返ってみます。まず私が社外取締役に就任する前は、ヤマダ電機は規模や利益の追求型企業のイメージがありましたが、実際に中に入ってその点は違うと感じたことを思い出します。2007年にCSR担当室が設置され、CSRの倫理綱領も掲げられました。普通の会社はここで停滞してしまうことが多く、立派なことは言うのだが理想論と実体に乖離がある例が見られますが、全くそこが違っていました。倫理綱領を作成して間もなく、当時は4つの分類(コンプライアンス、環境、顧客満足、従業員満足)に分けたのですが、4つのカテゴリーに定量目標を掲げ、その目標に対して進捗がどうなっているかを毎週の取締役会で報告することを続け、またその結果を公表しています。本当に社会貢献というものを考えて、そのことを愚直に続けていることがCSR(ESG)の理念と実体が遊離せずに、一体的に進捗している要因でした。
 本当に外から見た企業イメージと異なり、できることを愚直にやり続ける企業姿勢が強く印象に残っています。

社会に貢献するという理念をベースに社会貢献を進めてきましたが、当社グループの環境対応は、ESGの投資家からも評価されていると聞いています。

世の中がやっとヤマダ電機の考えに追いついてきた感じです。

―ヤマダ電機に事業を通じて対応が求められる社会的課題(マテリアリティ)をどのようにお考えですか?

今回の対談に際していろいろと事前に調べ考えてきましたが、現在行っている取り組みを愚直に続けていくことが、社会からの要請に適応するのではないかと考えています。今やっていることの延長線を着実に行っていくことが重要なのではないでしょうか。
 例えば環境では、現在、毎週追いかけていることを続けることで、環境にやさしい経営を実現でき、地球と共生できる企業になっていくと考えます。マテリアリティなどと新たなことを大上段に構えて検討する必要はないのではないでしょうか。 無論、社会からの要請に応えるためにスクリーニングは行った方が良いと考えます。実際に実施している部分もあるのかも知れませんが、外部評価と併せてマテリアリティを選定し、リスト化することが重要です。しかしこれも個人的な見解ですが、外部の意見を取り入れてスクリーニングを行っても、恐らく現在やっていることと大半が重複するのではないかと考えます。

重要なのは社会とともに進んでいくことです。そういう精神がなく、自己利益の追求だけでは、社会だけではなく、その会社もダメになる。社会に貢献した結果、利益が得られれば良いと考えるべきであり、そういう社会や時代である点を認識しなければならないと考えます。

―ヤマダ電機の社会貢献活動の特徴を教えてください

ヤマダ電機は、大上段に構えて社会貢献としてこれをやっているということを伝える企業(企業体質)ではないと考えます。社会貢献の特徴としては、本当にできることを愚直に継続的に行っている点であり、これが徐々に評価されていく点ではないでしょうか。「当社はこんなことをやっているんだ」とアピールするような企業や経営者ではないと言えます。

当社は毎年、個人投資家向けに説明会を東京と大阪で行っています。わざわざ群馬から出席される投資家もおり、説明会で「ヤマダ電機は宣伝が下手だ」「地元でこんな活動をしているじゃないか」「そういうことをちゃんと伝えた方が良い」と言われることもあります。確かに、そういった面では宣伝下手かもしれないと考えますが、文化活動や財団活動などでさまざまな支援を行っていることは事実です。

株主で熱心に応援する方もおり、毎年、多くの個人投資家を集めて説明会を行っている点は素晴らしく、是非とも継続した方が良いと考えます。また、株主総会に出席した際には、質疑応答で質問ではなく、地元にどれだけ貢献しているか、感謝しているかなどの応援メッセージを発言する方もいた点が印象的でした。

東日本大震災の時は大変でした。被災地の店舗には、道路が閉鎖する前に商品を搬入して地域に配るなどの対応を行いました。ニュースにはならなかったことですが、当社グループもいろいろな活動を行っています。

―今後、追加した方が良いとお考えになる活動はありますか

もう検討されているのかも知れませんが、全国の1万2千店の店舗網は、その地域のコミュニティの核になり得るものであり、いざという時のシェルターにもなり得ると考えます。店舗そのものが社会的な拠点になり得るため、その社会性をさらに発展させていくと良いのではないでしょうか。

コンビニが社会生活のインフラになっていますが、当社も取り扱い商品は異なるものの、ご指摘にあったように社会インフラとしての機能強化を考えています。例えばヤマダ電機は、ITの拡大に貢献しました。具体的には、全国の店舗網でパソコン教室などを実施し、普及をサポートしたのです。それまでは秋葉原や日本橋などの都市部の専門性の高い場所でしか行われていませんでしたが、ヤマダ電機では地方からそれを広めていった経緯があり、ITが短期間でこれだけ普及したのはヤマダ電機の功績のひとつと考えています。
 さらに家電だけではなく、住環境にかかわるすべてを提供できるサービスも始めています。新生活を始める際のすべてを提供できるサービスであり、これまでとは異なる全く新しいコンセプトの拠点は、お客様にとって利便性が高いと考えます。
 また日本国内だけではなく、グループ会社のベスト電器がアジア地域中心に拠点を拡大しています。国内でやるべきことはまだ多くありますが、長期的な視野で海外への足掛かりも固め、社会インフラになる拠点の拡大を着実に構築していきます。

―最後になりますが、中村様からステークホルダーとしてヤマダ電機グループに期待すること、山田会長からステークホルダーの皆様へのメッセージをお願いいたします

ひとりの生活者として考えると、まだまださまざまな社会的な不安があります。例えば独居老人の問題や少子高齢化などですが、そのような不安を解決するために、行政だけでは対応できないことをサポートできるのは「信頼のある企業」だけと考えます。経営理念として、お客様への「感謝と信頼」を掲げるヤマダ電機のような企業でなければ、そのような課題には応えることができないので、生活者が安心して快適に暮らすためのソリューションに役立つようなビジネスを展開してもらえると嬉しいと考えます。

今のご指摘はその通りであり、経済人として利益は求めなければなりませんが、社会に貢献していくことは重要であると考えます。身の丈に合った実体に即した経営を行いながら、ステークホルダーの皆様に満足していただける事業を展開していきます。現在行っていることは、時代を先取りしながらも方向性は間違っていないと考えており、収益に結び付くには時間を要するかもしれませんが、社会貢献を続けながら成長していきたいと考えています。